Handlename’s diary

色んなキモいヲタクです。

これゃ

※作者は以下の表現に見られる過激な思想は一切持ち合わせてない。全部、フィクションのキャラのイチ性格。

 

 

 

 ◯◯ま……。

 ◯◯が呟いた言葉は、暗く静かな部屋に白い息と共に霧散した。

 寒い。あぁ今日は、肌寒い夜だ。兎2匹が餅をつく月面が星空に浮かび、辺りを黄金に照らす窓からは、まるで耽美な絵画を見てるような気分を感じさせる。しかしそこから冷めた月の光が3Dなカーテンで切り裂かれた形になり、首元から胸板、左の二の腕、◯◯まの白く雪の沁み入ったような肌へと映された。プロジェクションマッピングのように四角い真っ白、と、その周りの暗闇の対照に、まるで意識がホワイトバックするかの如く目が眩み、思わずつむる。これ以上、刺激的な現実に乱されたくないかのように。俺は、このドキドキから逃れたいのか。苦しいのか。

 不思議だ。幸せなはずなのに、胸が痛く、辛い。知っていたように、これまで期待していたように、良いことではないのかもしれない。なぜか、黒く罪深いコーデンタールに心を蝕まれる。無数の虫でもあった。

 半ば無意識に、暗闇の中、右の方の二の腕をにぎる。柔らかく、凡百な表現だがそのまま指が吸い込まれるかのようだった。「はっ。。。」◯◯まから、声が漏れる。そうか、そうだな、これは◯◯まの身体で、自分の頭の中の現実での初恋の相手と地続きの白き柔肌の円柱だったのか、と思い当たる。

 そう意識した瞬間、自覚した瞬間。もう興奮が胸の中身を昂らせ死を感じさせるほどに頭をクラクラさせる。呼吸は浅く、一方で情動は腹の底から深く。獣は自身の頭の中にある理想の星空から舞い降りて来た全裸の兎を、まるで格好の餌食だと言わんばかりに喰い荒らす。餅の原型を残さずに引き裂きボロボロに使い果たすのだと。柔らかく伸びる肌なんて許せない。白は爪で赤く軌跡を残して、永遠に記録を残す。ズタズタに。後に訪れる後悔の残響をより大きくする背徳的快楽を享受する歓びの時間。自らの快感の為に最愛の人を薄く引き延ばし折り畳み切り刻みもみくちゃに手で慰みにして、終いには手から口に放りだしたかと思えば、咀嚼し、して、白く美しくもちもちの感触の白玉の天使を崇高で自由な星空のステージから、低俗で卑しいストリップ嬢の様に引きずり降ろし、たかが売女と同じ扱いをするのだ、そして、そして、それは咀嚼と同義で、きっと、きっと、吐き捨てる頃にはソレはもう白と赤と汚れを入り混じり丸めた、食えない泥団子のごとき醜悪なのだ。そしたらもう、俺は気持ちが冷めて全く興味をなくすんだろうな。汚物だから。そう、つまり。殺すのだ。きっとするのだと、自分がそばで狂乱の渦中に腰を動かして身がせわしなくもがく姿を、眺める。

 俺が、冷静になったその時、ようやっと半裸の自分が全裸の◯◯まの上で暴れながらズボンのベルトを外すのに苦労しているのだと知った。春から冬と、ずいぶんと時を経たものだ。

 春のうららかな雰囲気醸す青年に初対面の時から心惹かれていた俺は、心の底では、ずっとずっと、今日この日のこれを待ち望んでいたのだろうか。まるで、純粋(ピュア)で善いもので綺麗な思いの皮を被り。感情を持っていたんだ。

 青空。高いリゾートホテルの、外にあるタイプのプール。立っているのは、プールサイド。周りにはヤシの木が緑の景観として、邪魔にならないように植えられている。しかし、視界の真ん中にはとんでもない絶景が。すぐそこのプールから、ちょっと先。まっすぐ階段を降りたところかな。深い青海や明るく透き通る波と底の抜けな青空とそれを映える鮮明な薄黄の砂浜が。美しい。網膜を焼く。理想だ。えがかれたような。嘘くさい、まである。一枚の写真。両サイドにヤシの木。手前には広い綺麗なプール。

 あの子たちもいる。

 清廉な透明度をもつ肌にしゃらんと流れる幾千もの金色の斜線。水着で、巨乳に目が行く。ミノミだ!

 赤く髪に燃える光。鮮烈に笑う彼女は、マキちゃんだ!水着に、薄く白いパーカーを羽織っている。

 「オラッ! 早くこっち来いよ。」

 マキちゃんは俺の腕を引き、遊びの誘いをする。

 そうだった、楽しかった日常は戻って来た実感がした。

 まるで寄りかかるようにミノミも、腕に掴まる。ハハっ、メノミのよくある手口だ。

 プールサイドを、歩き出す。

 「先に、レイちゃんは海辺で本読もうかな、って。」

 なるほど。途中で合流しようかな。

 ちなみに、◯◯◯クちゃんと、ムラサキちゃんと、ネ◯ちゃんと、…。は、只今、諸事情で、都合が合わず。欠席だ。残念だなぁ。

 「ハハハ。」

 青空から降り注ぐ日の光が、眩しい。これだ。俺は、長年これを求めていたんだよ。

 「ハハハハ。」

 明るい世界。夏のある日。カラっ、と優しい風が俺達の身体を撫でる。

 「おい。そっちに行くのか。父さん、こっちで寝ておくからな。」

 ふと。斜め後ろのビーチパラソルから、お父さんから声がした。そうか。

 涙が出そうになるも、堪える。

 そうか、そうだったのか。そこに居てくれたのか。ずっと、お父さん……。やめだ。やめだ、これは!カラッといこうぜ。

 気持ちを切り替えて、改めて子供の頃から大切な宝石ばかりを集めたようなこの心の中にある決して譲れないような世界を思う。これから、まだまだ守って行こう。

 二人が先にプールに入るのを見て、自分も手すりに触れ、大股に段差を跨ぎ底に足をつける。おぉっ、思いのほか寒いな。

 「ハハハ。」

 腰あたりまで、水面が上がる。

 本当に、視界が明るい。端がモヤがかっているみたいに。

 右を振り返る。

 栗色のボブな髪、◯◯コちゃんだ。

 「さぁ、俺、やるよ。◯◯コちゃん。」

 右手で頭を撫でつつ、自分に言い聞かせる様に呟く。

 「うんっ、がんばって!」

 楽しい。背後に広がる世界の全てに応援されて、俺は今立っている。いや、背中を押されている。楽しい。まるで、幼い頃のレクのようだ。

 周りの景色は明るいのに、手元を見下ろすと暗闇に白い腰が浮かんでいる。ガッチリ両手で掴んでいる。

 そういえば、さっきズボンは脱いでおいたんだ。あッ、パンツ。

 よし、脱いだ。ずっと好きだった、明るい曲が流れている。

 「フェスみたいだね。声をかける。」

 声をかける。

 声をかける。って、声に出しちゃった。

 俺は今、諧謔の精神に占められているのかも。全部、メタに、作為的に意図で。

 こいつは、さっきから何も声を発しない。

 「俺は、いつでもいいよ。」

 ◯◯まは、白くやや骨ばり筋肉の浮かび上がったゴツゴツとした背中を向けている。逆三角形的で、立派なモンだ。

 ここで、気付いた。コイツ、男じゃねえかよ。ってか、じゃあ、コイツホモなのかよ。

 

 まぁ、いいか。

 犯す。それだけ。

 

 倒錯の末、

 

 同性に性的暴力を振るう。

 

 

 

 ……ハハ。

 アスレチックみたいだ。

 右上にある脚を担ぎ、左は自分のブツを掴み狙いを定めるのに使う。

 ギンギンに立っている。

 楽しい。これで生きて来た意味が分かってくる。楽しいな。

 突き刺すと共に、官能的な快感が気持ち悪いタコに包まれたような下俗な感触とセットで来る。

 引っこ抜き、また入れ、また引っこ抜き。

 繰り返していると、全身が粟立ちゾクゾクと下腹部から寒気を感じながらこれまでにないような自身の脳との直接接続をしていた。

 この世界には、戻ってこれたという意識と自分を取り戻したかのような気分を抱かせていた。

 なぜ生きるのか。

 

 

 

 

 

これゃ

※作者は以下の表現に見られる過激な思想は一切持ち合わせてない。全部、フィクションのキャラのイチ性格。

 

 

 

 ◯◯ま……。

 ◯◯が呟いた言葉は、暗く静かな部屋に白い息と共に霧散した。

 寒い。あぁ今日は、肌寒い夜だ。兎2匹が餅をつく月面が星空に浮かび、辺りを黄金に照らす窓からは、まるで耽美な絵画を見てるような気分を感じさせる。しかしそこから冷めた月の光が3Dなカーテンで切り裂かれた形になり、首元から胸板、左の二の腕、◯◯まの白く雪の沁み入ったような肌へと映された。プロジェクションマッピングのように四角い真っ白、と、その周りの暗闇の対照に、まるで意識がホワイトバックするかの如く目が眩み、思わずつむる。これ以上、刺激的な現実に乱されたくないかのように。俺は、このドキドキから逃れたいのか。苦しいのか。

 不思議だ。幸せなはずなのに、胸が痛く、辛い。知っていたように、これまで期待していたように、良いことではないのかもしれない。なぜか、黒く罪深いコーデンタールに心を蝕まれる。無数の虫でもあった。

 半ば無意識に、暗闇の中、右の方の二の腕をにぎる。柔らかく、凡百な表現だがそのまま指が吸い込まれるかのようだった。「はっ。。。」◯◯まから、声が漏れる。そうか、そうだな、これは◯◯まの身体で、自分の頭の中の現実での初恋の相手と地続きの白き柔肌の円柱だったのか、と思い当たる。

 そう意識した瞬間、自覚した瞬間。もう興奮が胸の中身を昂らせ死を感じさせるほどに頭をクラクラさせる。呼吸は浅く、一方で情動は腹の底から深く。獣は自身の頭の中にある理想の星空から舞い降りて来た全裸の兎を、まるで格好の餌食だと言わんばかりに喰い荒らす。餅の原型を残さずに引き裂きボロボロに使い果たすのだと。柔らかく伸びる肌なんて許せない。白は爪で赤く軌跡を残して、永遠に記録を残す。ズタズタに。後に訪れる後悔の残響をより大きくする背徳的快楽を享受する歓びの時間。自らの快感の為に最愛の人を薄く引き延ばし折り畳み切り刻みもみくちゃに手で慰みにして、終いには手から口に放りだしたかと思えば、咀嚼し、して、白く美しくもちもちの感触の白玉の天使を崇高で自由な星空のステージから、低俗で卑しいストリップ嬢の様に引きずり降ろし、たかが売女と同じ扱いをするのだ、そして、そして、それは咀嚼と同義で、きっと、きっと、吐き捨てる頃にはソレはもう白と赤と汚れを入り混じり丸めた、食えない泥団子のごとき醜悪なのだ。そしたらもう、俺は気持ちが冷めて全く興味をなくすんだろうな。汚物だから。そう、つまり。殺すのだ。きっとするのだと、自分がそばで狂乱の渦中に腰を動かして身がせわしなくもがく姿を、眺める。

 俺が、冷静になったその時、ようやっと半裸の自分が全裸の◯◯まの上で暴れながらズボンのベルトを外すのに苦労しているのだと知った。春から冬と、ずいぶんと時を経たものだ。

 春のうららかな雰囲気醸す青年に初対面の時から心惹かれていた俺は、心の底では、ずっとずっと、今日この日のこれを待ち望んでいたのだろうか。まるで、純粋(ピュア)で善いもので綺麗な思いの皮を被り。感情を持っていたんだ。

 青空。高いリゾートホテルの、外にあるタイプのプール。立っているのは、プールサイド。周りにはヤシの木が緑の景観として、邪魔にならないように植えられている。しかし、視界の真ん中にはとんでもない絶景が。すぐそこのプールから、ちょっと先。まっすぐ階段を降りたところかな。深い青海や明るく透き通る波と底の抜けな青空とそれを映える鮮明な薄黄の砂浜が。美しい。網膜を焼く。理想だ。えがかれたような。嘘くさい、まである。一枚の写真。両サイドにヤシの木。手前には広い綺麗なプール。

 あの子たちもいる。

 清廉な透明度をもつ肌にしゃらんと流れる幾千もの金色の斜線。水着で、巨乳に目が行く。ミノミだ!

 赤く髪に燃える光。鮮烈に笑う彼女は、マキちゃんだ!水着に、薄く白いパーカーを羽織っている。

 「オラッ! 早くこっち来いよ。」

 マキちゃんは俺の腕を引き、遊びの誘いをする。

 そうだった、楽しかった日常は戻って来た実感がした。

 まるで寄りかかるようにミノミも、腕に掴まる。ハハっ、メノミのよくある手口だ。

 プールサイドを、歩き出す。

 「先に、レイちゃんは海辺で本読もうかな、って。」

 なるほど。途中で合流しようかな。

 ちなみに、◯◯◯クちゃんと、ムラサキちゃんと、ネ◯ちゃんと、…。は、只今、諸事情で、都合が合わず。欠席だ。残念だなぁ。

 「ハハハ。」

 青空から降り注ぐ日の光が、眩しい。これだ。俺は、長年これを求めていたんだよ。

 「ハハハハ。」

 明るい世界。夏のある日。カラっ、と優しい風が俺達の身体を撫でる。

 「おい。そっちに行くのか。父さん、こっちで寝ておくからな。」

 ふと。斜め後ろのビーチパラソルから、お父さんから声がした。そうか。

 涙が出そうになるも、堪える。

 そうか、そうだったのか。そこに居てくれたのか。ずっと、お父さん……。やめだ。やめだ、これは!カラッといこうぜ。

 気持ちを切り替えて、改めて子供の頃から大切な宝石ばかりを集めたようなこの心の中にある決して譲れないような世界を思う。これから、まだまだ守って行こう。

 二人が先にプールに入るのを見て、自分も手すりに触れ、大股に段差を跨ぎ底に足をつける。おぉっ、思いのほか寒いな。

 「ハハハ。」

 腰あたりまで、水面が上がる。

 本当に、視界が明るい。端がモヤがかっているみたいに。

 右を振り返る。

 栗色のボブな髪、◯◯コちゃんだ。

 「さぁ、俺、やるよ。◯◯コちゃん。」

 右手で頭を撫でつつ、自分に言い聞かせる様に呟く。

 「うんっ、がんばって!」

 楽しい。背後に広がる世界の全てに応援されて、俺は今立っている。いや、背中を押されている。楽しい。まるで、幼い頃のレクのようだ。

 周りの景色は明るいのに、手元を見下ろすと暗闇に白い腰が浮かんでいる。ガッチリ両手で掴んでいる。

 そういえば、さっきズボンは脱いでおいたんだ。あッ、パンツ。

 よし、脱いだ。ずっと好きだった、明るい曲が流れている。

 「フェスみたいだね。声をかける。」

 声をかける。

 声をかける。って、声に出しちゃった。

 俺は今、諧謔の精神に占められているのかも。全部、メタに、作為的に意図で。

 こいつは、さっきから何も声を発しない。

 「俺は、いつでもいいよ。」

 ◯◯まは、白くやや骨ばり筋肉の浮かび上がったゴツゴツとした背中を向けている。逆三角形的で、立派なモンだ。

 ここで、気付いた。コイツ、男じゃねえかよ。ってか、じゃあ、コイツホモなのかよ。

 

 まぁ、いいか。

 犯す。それだけ。

 

 倒錯の末、

 

 同性に性的暴力を振るう。

 

 

 

 ……ハハ。

 アスレチックみたいだ。

 右上にある脚を担ぎ、左は自分のブツを掴み狙いを定めるのに使う。

 ギンギンに立っている。

 楽しい。これで生きて来た意味が分かってくる。楽しいな。

 突き刺すと共に、官能的な快感が気持ち悪いタコに包まれたような下俗な感触とセットで来る。

 引っこ抜き、また入れ、また引っこ抜き。

 繰り返していると、全身が粟立ちゾクゾクと下腹部から寒気を感じながらこれまでにないような自身の脳との直接接続をしていた。

 この世界には、戻ってこれたという意識と自分を取り戻したかのような気分を抱かせていた。

 なぜ生きるのか。

 

 

 

 

 

【日記】1日目

絶対続かねえだろお前!!

 

 脳内の第三者から、怒号が飛んで来る。

 いや、間違いない。十中八九尻切れトンボで終わるだろう。実際、幾つもの日記達をこの手で葬ってきた実績が俺にはある。

 しかし、今度こそは…!

 なんかいける気がする。不定期にするし。

 

 日記、開始ッ!!

潰れた空き缶

 「いちいちうるせーんだよ。」

 細い首と鎖骨、薄い身体、いとも容易く押せる、空き缶のような軽さだと感じる。

 思わず、突き飛ばした。彼女は数歩よろめいて、すぐに抗議の目をこちらに向ける。

 心配してくれたのに。俺の中の誰かが呟いたように思う。その通りだ。

 幼馴染との下校中、突如俺は今後一切学校に行かない旨を伝えた。こちらとしては悩んだ末に言ったのだが、向こうからしたら寝耳に水だろう。だから、このくらい激しくつっかかってくるという反応も、想定していて然るべきだ。でも、

「もういいんだよ。本当に、どうでも!お前はお前でクラスのみんなと仲良くすればいいじゃん、そういうのもう俺には合わないって気付いたんだよ。」

 醜く言い返す。

 あーー、ダッセェ。今の俺は紛れもなくダサい。自覚ならできる。だけど、仕方ないだろ。今の俺は精神的に追い詰められているんだ。そんなこと配慮できる余地は脳に残ってないんだよ!そうだ、だからこれは仕方ない。

「嫌なことあったんなら、私に言えばよかったでしょ!!」

 言えるか。こんなこと。恥ずかしい。あぁ、恥ずかしい恥ずかしいうぜぇ帰りてぇ。

 必死に頭の中に一人部屋でPCゲームを好きな音楽聞きながらやる俺の姿を描く。

「どうせ分かりっこねえよ。性根が違うんだよ、お前とは!」

 ああああ、どうせこんな社会や世の中に適性のあるコイツは、今後も幸福を感じて生きてくんだろうなぁ!!俺には家に引き籠るのが最善策なんだよ!!

「明日来て、私サポートするから。いや、あの、サポートっていうか」

 まぁサポートで合ってるだろ。変に気にしやがって。

「...ていうか、将来どうするの。中学生からそうなっちゃったら。」

 さぁ?どうにかするよ。それは、今後の期間考える。

「いやいや、絶対後悔するよ。私と、た、楽しくすごせるよ、友達もできるはずだし」

 本当に優しいなぁ。なんでこんなに好意的に接してくれてるんだっけ。小学校の頃はこの娘とどう過ごしてたっけ。あの頃の俺の影を見てるのかな。多分もっかいリセットして関係を築けと言われても、無理だろうな。何かデカい後悔みたいなのが心を蝕む。

「じゃ、」

 帰る。心の中で、どうしてこんないい娘が友達にいて、こんなにもどうしよもなく育てるんだろう?と疑問を持つ。あぁ仕方なかったんだよ、うるせぇ、知らねえよ、と答える。もう数m後ろに彼女はいる。振り返りもしない。

 

 

 家に帰る。扉を閉めた途端、少し気が楽になった。そのまま歩き部屋に戻るなりベッドに腰掛ける。少し帰り道のことと、小学校の頃の思い出を考える。明日、家に来るだろうか。デスクに移動し、痛む胸の内を誤魔化しつつヘッドフォンを頭に装着する。これからは何時間と遊べるんだ。今日はいつまでやろうかな。

 

 

 

 

 時刻は深夜2時。人の気配がし、扉がノックされた。

「三佐玖ちゃん、車にはねられて今病院で重体なんだって。」

 母に、部屋越しに伝えられる。

 

 ......。

 当然、頭が真っ白になる。ヘッドホンを片耳から両耳外し、肩にかける。

 見開いた目に、景色が真ん中から白くなっている錯覚を覚える。イヤホンから小さく漏れ出る好きな音楽が場違いに思える。さっきまでいつも通り楽しかったのに。もう戻れないのか。これは現実だから。無論、今聞いたことをなかったことにして、作業に戻るのは叶わない。知ってしまったから。今、この世界のどこかで、一刻を争う事態になってる幼馴染が、病院で横たわっているんだと。逃げられない。この現実の時系列、タイムラインからは。この世は今しかないんだ。

 ...いや、待てよ。重体ってことは、まだ大丈夫なのか?んな訳ないだろ。重体は死にかける、ってことだ。あぁ、嫌だ。あぁ、嫌だ!!

 今、行かなくては、死ぬまで後悔する。

 とるべき行動は天地がひっくり返ってもひとつだ。どんなに感情が伴わなくても。

「アラタ!?」

 そう考えるや否や、

扉横に掛けられているジャケットを半ば無意識にひったくり、廊下に飛び出す。

「病院に行くわよね?」

 母が聞く。

 そりゃそうだよ!早くしろ!!決まってんだろ!!!

 何も考えられない。身体が親の後を勝手に着いて行っているようだ。なにか思い出そうとしたが、なにも。なにも、なにも。なにも考えつかない。空白だ。

 手に力が入る、少し驚きをして目線を下げれば、俺は取っ手を掴みドアを開け助手席に乗りこむところだった。そして、また思考を忘我に持っていかれる中、流れのままに座席に座る。

 背もたれから浮いた背と、シートベルトの締め付けを、ぼう、っと感じつつ。自身はやる気持ちと今すぐ病院に着かないことに対する理不尽な苛立ちを胸中で騒がせる。頭では呆然と三佐玖との今までを思い出す。

 そして、次に絶望と後悔の波が怒涛の勢いで胸を襲う。

 

 座席から飛び出す。駐車場を突っ走ってる内に、自分が病院に到着していることが分かった。そうだ、場所を知らない。

「C棟の5Fの503号室!!」

 ありがとう。そこか!今行くから、お願いだから、まだ行かないでくれ。死なないでくれ。生きていてくれ。

 自動ドアが遅い。ロビーを突っ切る。広い。無駄に広い。階段はどこだ!階段は!!トイレ横の自販機が並んだ場所を横切った。心の底から泣きそうな気持で、立ち止まり辺りを見周した。全員がぎょっとして見ているのが分かった。俺は、泣いていた。とっくに。頬から流れ、顎下から大量の涙の粒が落ち、そんなことはどうでもよかった。

「階段はどこですか!!」

 大声で泣き叫んだ。

 恥ずかしくなんかなかった。人が指し示した方を見れば、それっぽいところがあった。

 後ろから看護士が走ってきた。何か訴えてるが耳にはもう何も聞こえなかった。

 走り出した。腕を掴まれた。「場所を教えますっ!!」と言われた。

「C棟の5Fの503号室です。本当に急いでるんです。」

「分かりましたっ!!」

 地図のある方に歩く、指でさされる。わかった、完璧に理解したから。

「ありがとうございます!!」

 階段に走る。階段を走る。5Fか。ここはどこだ。A棟だから。ここからこう行けば、いいのか。

 3Fからフロアは消灯され暗く、無人。廊下は窓からの月光か、非常口の看板の緑の光のみだった。

 走る。あともう少しだ。全力で急がなければ。

 足を絡ませて、前に転ぶ。地面に横たわる。ふざけるな。

 そんな暇はない。立ち上がれない。我に返った。足が痛い。息が上がる。肺が痛い。汗だらけだ。身体はだらけたが、意識は止まらない。早くいかねば。

 走る。もう、痛くない。

 ここだ。一瞬立ち止まりかける。この先に、彼女が。緊張する。

 なるべく考えずに取っ手を掴み、一気に腕を左から右へ思いっ切り振って。

 扉を開けた。

 この光景を直視しなければいけないのだ。感情がどんなに追い付いていなくとも、今すぐに。そして、最善の行為をするのだ。絶対に。

 やがて、部屋の明るさから白飛びした視界が戻っていく。

 目ノ前ノ現実ヲ、一切ノ予断ナク映シ出ス。

 無情を前に胸に閉じ込めた心臓がバクバクする。次の瞬間を待つしかない。

 

 

 ベットに仰向けに倒れた少女。背の部分は起き上がり、こちらを向く包帯の頭。

 はっ。

 背は起き上がっている。意識はあるのか?こちらを見ている。顔を見る。あっ。

 目が合う。表情は笑っている、こちらを見ている。

 

 一歩、一歩、病室内に足を進める。手を差し伸べる。包帯だらけの身体。触れてはいけない気がして、腕を咄嗟に引く。地面に足を突ける。呆然と、しかし僅かに安堵が胸に湧き上がってくる。乾いた頬に、再び涙が流れだす。

 

「大丈夫だったのか?」

 そう問うしかないだろう。

 

「いやいや、大丈夫ではないでしょ。」

 

「そうだよな、そうだな、ごめん。マジで」

 

「いいよ、なんでそんな泣くの。」

 

「泣くよ!生きてるんだよな!!何か月とかないんだよな!?ずっと生きてるんだよな!!」

 

「リハビリは何か月も必要だって。」

 

「何か月生きるとかないよな!!?」

 もうしっちゃかめっちゃかだ。

 

「ないよ。」

 

「よかった...!!」

 

 あぁ、。これ以上に嬉しい取り越し苦労は人生にない。

 

 

 

 

 ......無我に、彼女を見上げる。本当に、大袈裟に。彼女がビックリするぐらいに。

 

 気付けば、ベットの横には彼女の父と母が立っていた。最初からいたのだ。

 後ろから、ドアが開く音がする。俺の両親だ。もう追いついたのか。そんなにぼーっと彼女を見ていたのか、俺は。そして二人は、膝立ちをする俺を見た。

 ふと前を向いたら、彼女の両親がややギョッとした目でこちらを見ていた。

 

 

 

 ...恥ずかしくなった。